口が鉄の臭いでいっぱいだ
息が出来ない
苦しい
目が霞む


自分には大きすぎる手柄を立てられた
冥土の土産ができた
少しは役に立てただろうか


鼻は潰れてしまってるのかもしれない息ができない
無意識に空気を吸おうと勝手に口が開くが空気がまともに肺に入らない
口に溜った血をゴボゴボと鳴らすだけ
きっと仰向けで倒れているのだ
首どころか指一本動かせない
空気ではなく血が肺に送られる
苦しい

血液を全て失う前に
空気が足りずに死にそうだ

息が出来ない



あぁ

この死に方は当然かもしれないと
ふと、思った


安らかに、直ぐに、死なせてなるものか…


お前が

殺した

俺たちのように苦しめ、と

昔裏切た者の声が聴こえる気がした


それならこの苦しみも
この死様も自業自得なのだ


…………じゃり


音が聴こえた
幻聴ではない
この足場の悪い瓦礫の上を歩く音

こんなになって目が見えなくとも
音だけはよく聞こえるようだ

音は近付いて来ている

近くまで来たかと思ったら
私の顔を横に倒して口に溜った鉄臭いモノを出した

肺に血液の変わりに空気が入り込む
ようやく吸えた空気に少し気が緩んだ
胴が熱い
腹はまだついているのだろうか

いや、どうせ死ぬのだ


そういえば今私を動かしたのは誰だろう?
味方だろうか?
だとしたら何故この様なところに?

それよりもこれは
助けられたことになるのだろうか?
ただ死期が伸びただけ


  直ぐに  死なせてなるものか

あぁ、あなた達ですか?


「大丈夫か?」

違う
聞き覚えのある声
誰でしたっけ?
頭が回らない

誰かは知らないですけれど
大丈夫の訳は無い
見て分かるでしょう



「……た……りで……」
冗談っぽく少し口角を上げたつもりだが
感覚がまったく無い
かすれきった声も相手に通じているのかわからない

もしかしたら相手も私が誰かわからないかも知れない

誰か顔を確かめたかったがもう大分前から目は目としての機能を果たしていない
自分の体のこともわからない


最期まで面倒をかけてしまってすいませんね

そう言おうとしたが声がでない
急に寒くなった
首が熱い

そうでしたか
あなたが助けてくれるのですね

思い出しました




なにを考えていた?
なにも考えられない

何が聴こえる?
何も聴こえない

思考が回る
自分の意思と関係なく
まるで足掻く様に
もう何も考えたくないのに




思考が止まる

今ここで終わると確信した

瞬間

光が見えた気がした


あぁ



今日は晴れか





腹が減った


米が食べたい





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SAMURAI7のヘイハチがだいすきです

途中で来たのはキュウゾウだと思う
なんか落下地点近かったってどっかで聞いた気がしたので
ノリと勢いで書いた

超めずらしく救いがある感じにしてみました

あの高さから落ちたら大体即死だろうけど
まぁSAMURAIだから
大丈夫だったんじゃない?(投げやり